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広島大学大学院 統合生命科学研究科 特任教授 坊農 秀雅 様
岩手医科大学 医歯薬総合研究所 生体情報解析部門 教授 清水 厚志 様
京都大学大学院 医学研究科 博士課程後期 丹羽 諒 様
プラチナバイオ株式会社 代表取締役CEO 奥原 啓輔 様
はじめに
バイオインフォマティクスとは?
最初に「バイオインフォマティクスとは?」というテーマで坊農先生の研究室の学生から説明がありました。
生物学を勉強するときはこれまでは実験を主に調べる手法として行ってきましたが、情報科学、プログラミングという手法をつかったバイオインフォマティクスが最近よく使われるようになってきました。
バイオインフォマティクスは多岐にわたっており、現在では様々な生物のゲノムを高い精度で解読できるので、これからの研究や、その研究結果が活かされる日ごろの生活においても重要になってきます。
動画はこちらからご覧いただけます。https://togotv.dbcls.jp/20230314.html
わかりやすく説明をしてくれた坊農ラボの学生さんたち
私の履歴書
ゲストの先生方のキャリアパスを聞いて、今後のキャリアを考える。
私の履歴書①
広島大学大学院統合生命科学研究科
特任教授 坊農 秀雅 先生
動画はこちらからご覧いただけます。https://togotv.dbcls.jp/20230315.html
バイオインフォマティクスの専門。広島大学で講義を行っています。
ほかにも生物科学、データ解析を主とした専門書の執筆を行っています。
2010年現在のキャリアパス紹介動画は統合TVのYouTubeチャンネルに紹介もしているので是非見てみてください。
大学3年生、生物物理学の授業でヒトの遺伝子が読めるかもしれないという新聞記事が配られた際に興味を持たれたとのことです。
大学院進学し、ピペットをキーボードに持ち替えてゲノム情報科学の研究室に入門しました。
ヒトゲノムプロジェクトという、ヒトゲノム配列を全部解読し、遺伝子も全部決められるはず!というプロジェクトに携わりましたが、配列を解読しても設計図は読み解かれなかったとのこと。
現在でもどんどん配列を読むことは続けられており、遺伝子を予測して、その配列からどのような機能となるかの予測を続けているとのことです。
広島大学では赤しそや、ミツバチなど有用物質生産生物をターゲットに、ゲノム配列解読、遺伝子を見つけていく部分を頑張っています。
昨今ゲノム編集ツールは開発する人が多いですが、バイオインフォマティクスは開発する人が少ない状況ですが、最近は注目されつつあるとのことです。
その研究において大事なのが公共データベースのDNAデータです。公共データベースを使ったメタ解析なども行っているので、ともに研究できる新しい研究者を見つけていきたいとのこと。どんどん坊農研究室に出入りしてほしいし、見に来てください!といわれていました。
私の履歴書
ゲストの先生方のキャリアパスを聞いて、今後のキャリアを考える。
私の履歴書②
岩手医科大学 医歯薬総合研究所 生体情報解析部門
教授 清水 厚志 先生
動画はこちらからご覧いただけます。https://togotv.dbcls.jp/20230316.html
岩手医科大学のほか、慶應義塾大学、情報・システム研究機構、東北大学などで5個の教授職を持たれています。エフォートを伺うとなんと渉外交渉が90%くらいを占め、研究をどう進めるかというお仕事が多いとのことです。
小学校3年生の時にPCを買ってもらいプログラミングができるゲームに夢中だったとのこと。
その後、硫酸銅の美しさから化学に興味をもち、有機化学の教科書で学んだ電子軌道がとても面白く、大学でも生物科学研究室で金属タンパク質の勉強をし、教職課程も選択されたとのこと。大学院修士2年目の時に高校の先生として教え始めました。大学院の博士課程で3年間を過ごし博士を取得し、このまま高校の先生になろうと思っていたところに慶應義塾大学の清水信義先生と出会い、PCが得意だという話をしたら、UNIXを用いてヒトゲノムプロジェクトの仕事をすることになりました。
朝から晩までコンピューターと向き合う日々だったとのことです。そんな中、坊農先生が書かれたバイオインフォマティクスの若葉本と出会ったとのことです。
そしてヒトゲノムプロジェクトに携わっていると、ある日突然清水信義先生の方針転換からメダカを研究するチーム所属になっていたとのことです。
ヒトとメダカの研究を進めているときに出会ったのが次世代型シークエンサーであり、慶應義塾大学や他の研究機関のバイオインフォマティクス解析を手伝っていたとのことです。
そんな中、東日本大震災からの復興にむけたプロジェクトである東北メディカル・メガバンク計画の立ち上げに関わりました。ゲノム解析をすると覚悟して岩手県に引っ越したところ、蓋を開けてみるとエピゲノム解析をやることになったとのことでした。
コロナ禍にはいっても研究は推進されており。2021年には全国大規模ゲノムコホート連携の担当として37万人のデータを一か所に集める活動をされているとのこと。
これからも研究をどんどん進めていきたい!とのことでした。
私の履歴書
ゲストの先生方のキャリアパスを聞いて、今後のキャリアを考える。
私の履歴書③
京都大学大学院医学研究科
博士課程後期 丹羽 諒 さん
動画はこちらからご覧いただけます。https://togotv.dbcls.jp/20230317.html
博士課程の大学院生ということで参加者の皆様により近い立場からのお話でした。研究内容はiPS細胞。その凄さを語っていただきました。
iPS細胞は簡単に言えば人工多能性幹細胞、再生医療をはじめとした分化多能性を持つ細胞で、様々な分化ができるというのが再生医療に応用されている部分です。
iPS細胞には小さいモデルとして疾患を再現できるという役割もあります。これまでの生物学の実験にはがん細胞が使われており、研究室ごとで同じクローン化された細胞が用いられていました。一方で、iPS細胞はことなるゲノム配列をもっているので、実際の患者さんに沿った再現ができる、細胞レベルでの疾患研究が実現できます。具体的には、ゲノム編集で特定のバリアントだけを修正した細胞をつくることができます。ドナーと同じ細胞とドナーの細胞の中で特定のバリアントだけを修正したものを比較研究できるといった面で、iPS細胞とゲノム編集はすごく親和性の高いものであるとのことです。
丹羽さんのキャリア形成ですが、岐阜大学で応用生命科学を学んでいたとのこと。
在学中にiGEMという国際コンテストサークル活動をしていたとのこと。そのコンテストの中では、セリアック病の治療薬をつくるプロジェクトが製薬会社に治療薬として買収されたこともあるそうです!生物プログラミングは世界を変えることもあるとのことでした。
生物プログラミングの経験を通して、今の研究分野を選んだそうです。
私の履歴書
ゲストの先生方のキャリアパスを聞いて、今後のキャリアを考える。
私の履歴書④
プラチナバイオ株式会社
代表取締役CEO 奥原 啓輔 さま
動画はこちらからご覧いただけます。
https://togotv.dbcls.jp/20230318.html
キャリアのスタートは研究者でなく、研究者を支援する仕事をするJSTにて、産学連携のサポートをされていました。内閣官房で国の知財戦略の策定をしていたキャリアもあり、
その後東広島市の市役所にて子育て支援の仕事を4年間されていました。
広島大学へ出向、大学の営業マンとしての仕事をはじめ、共同研究や国のプロジェクトの獲得を目指すサポートをしており、その中にはもともと所属されていたJSTのプロジェクトを獲得する側になることもありました。そういった中で広島大学のゲノム編集の研究者である山本卓教授に出会い、広島大学発ベンチャーを2019年に立ち上げました。
法律・知財から資本政策、グローバルビジネス、社会コミュニケーション、ELSI(倫理的・法的・社会的課題)まで、様々な専門家と連携しながらビジネスを作っていき、「第21回Japan Venture Awards(JVA)」を受賞されました。
ゲノム編集とバイオDXで未来を拓くというテーマで様々な機関との連携やプロジェクトに取り組んでいます。
JST共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)のバイオDX産学共創コンソーシアムもその一つです。広島大学を中心に、他の研究機関、企業などが集い、バイオとDXの異分野融合で人類が直面する社会課題の解決を目指しています。食糧問題の解決、新型感染症対策、脱炭素などをターゲットにして、プロジェクトを推進しております。
広島県や東広島市をはじめ様々なステークホルダーと連携し、社会課題の解決を目指してグローバルビジネスを展開したいとのことでした。
トークセッション
ファシリテーター 奥原 啓輔 さま
(プラチナバイオ株式会社 代表取締役CEO)
新しいフィールドやテーマに研究の目先を変えていくときの心構えは?
清水先生
立場で違うが、教授の立場では、興味をもったものやフィールド、メンバーなどに提案をして全体で進めていければということ。若手時代ではいきなり新しい分野を研究することになることもあるので、興味をしっかりもつことを大事にしていた。
チーム作りが大事だということだと思う。
坊農先生は広島大学でのチーム作りの動きはどのようにされたのですか?
知らない地やコロナ禍ということもあり困っていた。そういった中で、ネットの活用をした。研究室の内容をWEBサイトに細かにのせて、SNSや研究室紹介サイトのプロジェクトもつかい発信を進めていった。バイオインフォマティクスでも、農学生物系というのは珍しく、他県からがほとんどであるが、農学部のバックグラウンドがある人が多くきていただいた。
坊農先生
大学から大学院のステップアップで別の場所を選択することもあると思うが、どのように研究室を選ばれたのですか?
岐阜大学では乳酸菌の研究をしていたゲノムシーケンスによる発展を考えていくときにヒトはユニークで多様性がすごくデータの蓄積があるということでヒトに興味を持った。
自分の興味の遷移により研究室を変えていったイメージです。
丹羽さん
人のデータの蓄積について、集約や活用などについて渉外交渉はどのようにフォーカスをあてていますか?
日々様々な論文を呼んで、インプットをしている。大切にしているのはどういう研究、技術を持っている人がどこにいるのかを調べて、直接その人に会いに行くこと。プロジェクトを起こすときに話せるようにしておくこと。
清水先生
坊農先生は人材育成のためにたくさんの著書を執筆されています。
この活動は研究をする上でどのような位置付けになりますか?
バイオインフォマティクスという本は日本になかった中で出版社の協力もあり自分の言葉で書籍化できた。教育というよりも研究分野をしってもらいたい、研究の立場を変えたいというところがあった。コンピューターを使って解析をするということが当たり前ではなかったので、興味を持った人がアクセスできるような仕組みにした。教える側も実は負担が減るということもあると思う。
坊農先生
高校生に向けて、バイオインフォマティクスを始める際に最低限必要なものってなんでしょうか?
PCと電力、インターネットがあればできると思う。
坊農先生
丹羽さんが関わった、iGEM ではどうでしたか。
中古のPCを使っていた。iGEMではウェットは実験が必要ですが、ドライ解析のパートは汎用のPCで十分できると思います。
丹羽さん
世界に目をむけると、いろいろなデータがでてきており、公共データベースの搭載も進んでいる。その活用について現状はどうなっていますか?
坊農先生
たくさんのデータにだれでもアクセスできるようになったが、どこにあるのかは論文などをフォローしていないとわからない。知ること、活用すること、どういうことを解析したいかを組み立てていくことが大事と研究室でも指導しています。
ヒトの研究をしていると、個人情報保護法の関係で全研究者がアクセスできないものもある。そういった中でチームを編成してそれぞれのデータを活用できるような道をつくっている。
清水先生
どこにどういうデータがあるかは重要視していて、研究室にはオープンデータだけでない知識の蓄積があるので、真実に近しい情報が蓄積されているかどうかは大事です。
丹羽さん
世界的な研究の動向についてここ数年で最先端の科学者が取り組まれているトレンドは?
塩基配列を読む技術が当たり前のものになってきていると感じた。たとえばりんごを例にとっても、様々ある品種のそれぞれでゲノム配列を決定している動きにもなっている。
坊農先生
ヒトゲノムプロジェクトのときも国際的な共同研究というものもあったと思う。
40万人のデータと海外のデータの比較や連携の研究は進んでいるのですか?
例えば脳梗塞の研究でいえばフランスの研究者の呼びかけにて、各国で持っているゲノムデータの解析をすすめようとなっていたしかし各国であつめるとなると法規制などがあるので、解析方法の統一化をして、各国での解析した結果を持ち寄って、メタ解析をおこなった。
清水先生
丹羽さんはサンディエゴにいったということだが、どういうプログラムを活用しましたか?
サンディエゴでは、シーケンスのイルミナ社の本社がある。(シーケンサー)ゲノム解析の潮流であり、製薬会社やベンチャーなどの開発が進んでいる。小さい会社が会社同士の繋がりを持ちながらシーズをつくっている姿を卓越大学院というプログラムで視察を行ってきた。
丹羽さん
Q&A
参加してくださった方々から出た質問にお答えしました。
1
遺伝子組換えとゲノム編集の違いは?(大学院生)
ゲノム編集は、特定のDNA配列を狙って切断し、その修復過程で情報が書き換わることを狙う技術です。これは自然突然変異を狙って起こす技術と言えます。
(奥原CEO)
遺伝子組換えは、外部から遺伝子を挿入する形になり、自然界では起こらない変化をもたらす技術になります。その一方で、ゲノム編集は自然界で起こることを再現する技術であるので、社会受容のしやすいのではないかと思います。
(丹羽さん)
2
大学院に進学するにあたってどのように勉強していればよいか?(大学生)
後悔のないように、やりたいことをやればよい。
可能であればプログラミングを覚えておくとよいと思います。(坊農先生)
大学から大学院の場合は、英語スキルと小論文に必要な熱い気持ちと知識。
また社会人から大学院に行く場合という道もあるのでぜひ企業や自治体に努めている人がいたのならば博士になってみませんか。(清水先生)
研究の内容も大事だけれど、誰に教えてもらうかも重要です。(丹羽さん)
先生に会いに行くということも大事。オンラインでの講演もあるし、いろいろ探してもらって自分の興味の幅を広げていくといいのかと思う。(奥原CEO)
研究室紹介
のぞいてみよう!bonohu-lab!
イベントの最後には、広島大学大学院 統合生命科学研究科 坊農秀雅先生の研究室をバーチャル訪問しました。
この動画は、このイベントの企画をしてくれた学生たちが、坊農先生の研究室を訪問する様子を事前に撮影・編集してくれたものです。今回対象とした”高校生・大学生”の興味・関心をくすぐるようなコンテンツになるよう工夫し準備してくれました。